駒ヶ根市郷土館は、県内にも数少ない大正期の洋風建築で駒ヶ根市役所の旧庁舎です。昭和46年秋に庁舎新築に伴い、庁舎の代表的な部分(延面積410.113m²)を現在地に移築し、郷土館として保存するとともに民俗文化財等を陳列しています。
旧庁舎は大正11年10月に、旧赤穂村役場として、当市出身、伊藤文四郎工学博士の設計により建築されました。開拓期の米国で発達した近世コロニアル様式を取り入れ、内部の装飾に近世ルネッサンス式を加味し、当時の役場としては斬新的で豪華なものでした。工費は5.4万円位で、当時の村の総予算が19万円余でしたから、かなりの大工事となりました。
この住宅はもと竹村源吉氏の家で、駒ヶ根市中沢大津渡(おんど)にありましたが、重要文化財に指定後、郷土の文化遺産をよりよく保存するために、駒ヶ根市が譲り受け、移築したものです。
移築工事は文化庁の指導のもとに行われ、綿密な調査に基づいて建物が造られた当時の姿に復原修理されました。
竹村家は江戸時代には代々名主をつとめた家柄です。この家の建立年代は明らかではありませんが、江戸時代中頃(約270年前)と考えられています。名主だけに許された式台を備え、外観も堂々として、これだけの大きさの民家は、当時村に1~2軒しかありませんでした。江戸末期になると伊那地方の名主階級の家は、板葺の本棟造(ほんむねづくり)に変わり、こんな大きな茅葺の家は造られなくなります。旧竹村家住宅は当地方の江戸中期上層農家の典型として、貴重な民家なのです。
市内を一望する「ふるさとの丘」の上に建てられています。展示室は東伊那地区の反目遺跡・遊光遺跡から発掘された土器を中心に、縄文から奈良・平安に至るまでの展示をしてあります。また、田下駄や八反取り、鯉仔担ぎ桶などの田畑の道具や森林・河川に関係する民具も多く展示しております。
駒ヶ根市民俗資料館は、市内に残る唯一の学校木造校舎として平成8年に駒ヶ根市の有形文化財に指定されました。既に取り壊された建物西側部分は明治42年に建築され、現在残っている部分は大正2年に増築されたもので、ほとんど改造等は行われていません。このような建物は、伊那谷でも数少なく、昭和57年に市立博物館付属施設「駒ヶ根市民俗資料館」となりました。
平成3年に屋根の葺き替え、そして平成8年に内装・外装の修繕をし照明を備えた展示室として公開できるようになりました。資料は、昭和40年から小学校PTAを中心に地域の方のご協力で集められ、特に昭和46年度に中沢学校開校百年記念事業の一環として、PTA・公民館分館・高齢者クラブの協力を得て中沢地区全戸に呼びかけ民具を中心に郷土資料の収集を行いました。集められた資料は2000点にも及び、これだけの民俗資料を豊富に収蔵している例は上伊那でも見当たりません。また、中沢は伊那山脈の山麓に集落が点在し、山林への依存度も高く、こうした父祖の代の農山村生活を支えた民具が収蔵されており貴重であります。
地域の方により集められた資料であり、しかも資料館が小学校の校舎でったということで、地域の方との関わりが強い施設になっています。小学校、公民館の学級生や高齢者クラブの方による館内の清掃と周辺整備、高齢者クラブ等による館内説明ボランティアと、それぞれの立場でかかわっているばかりでなく、授業で館内の資料を利用することにより、世代を越えたふれあいの場にもなっています。